でも。
結納した後に、彼は結婚前にと一度だけ元カノと一夜を共にしたらしい。
それが結婚式前に私にばれてしまい、私に着信拒否され、花屋のおじいちゃんに杖で殴られ追い出された。
最初は純粋な気持ちじゃなかったけれど、不器用なりにも仕事を頑張ってるあの人を私はちゃんと好きだった。
不貞が分かってから、自分の気持ちを知ってしまった。
私はきっと彼に不誠実じゃなかった。どこかで計算していた。
私の打算が生んだ亀裂だった。
いくら好きでも、私たちの好きは純粋じゃなくて、真っすぐじゃなくて歪で。
省吾は、そんな結婚のせいで生まれた可哀そうな子どもだったのだから私を全力で止めるのは分かる。
分かるし痛いし苦しかった。
「好きだけで結婚したら、苦しいのかな」
「俺は好きだけで、ちーちゃんと結婚したかった。幸せじゃないなら結婚してほしくない」
「でも好きだけで結婚したかった。純粋な気持ちで結婚したかった」
嫌いになれないから苦しい。発狂したい。
苗字が変わるんだなって思ってもピンと来なかったんだ。
あと一週間で、こんな気持ちで結婚しちゃうのかなってポカンと大きな穴が開いていたんだ。
「浚ってくれてありがとう、省吾」
苦しい私を、悪者になってでも助けようとしてくれたね。
自分みたいな子どもが生まれてしまうって危惧して、私に子ども扱いされて傷つけられても、浚いに来てくれたね。
「電話して。身代金を要求するから」
「どうぞ」
携帯を差し出した。
都会の騒音なんて一切ない、静かな田舎で。聞こえてくるのは、遠くで眠っているおじいちゃんの鼾ぐらい。
そんな静かな夜に、携帯から発信音が響く。
私も省吾も泣きながら、発信音を聞いていた。
結納した後に、彼は結婚前にと一度だけ元カノと一夜を共にしたらしい。
それが結婚式前に私にばれてしまい、私に着信拒否され、花屋のおじいちゃんに杖で殴られ追い出された。
最初は純粋な気持ちじゃなかったけれど、不器用なりにも仕事を頑張ってるあの人を私はちゃんと好きだった。
不貞が分かってから、自分の気持ちを知ってしまった。
私はきっと彼に不誠実じゃなかった。どこかで計算していた。
私の打算が生んだ亀裂だった。
いくら好きでも、私たちの好きは純粋じゃなくて、真っすぐじゃなくて歪で。
省吾は、そんな結婚のせいで生まれた可哀そうな子どもだったのだから私を全力で止めるのは分かる。
分かるし痛いし苦しかった。
「好きだけで結婚したら、苦しいのかな」
「俺は好きだけで、ちーちゃんと結婚したかった。幸せじゃないなら結婚してほしくない」
「でも好きだけで結婚したかった。純粋な気持ちで結婚したかった」
嫌いになれないから苦しい。発狂したい。
苗字が変わるんだなって思ってもピンと来なかったんだ。
あと一週間で、こんな気持ちで結婚しちゃうのかなってポカンと大きな穴が開いていたんだ。
「浚ってくれてありがとう、省吾」
苦しい私を、悪者になってでも助けようとしてくれたね。
自分みたいな子どもが生まれてしまうって危惧して、私に子ども扱いされて傷つけられても、浚いに来てくれたね。
「電話して。身代金を要求するから」
「どうぞ」
携帯を差し出した。
都会の騒音なんて一切ない、静かな田舎で。聞こえてくるのは、遠くで眠っているおじいちゃんの鼾ぐらい。
そんな静かな夜に、携帯から発信音が響く。
私も省吾も泣きながら、発信音を聞いていた。



