近くて遠い。

これは中学生の女の子の片想いの話。



「え!奈々ちゃんまたうちら同じクラスじゃん!やったね!」

そう言ってあたしのところにかけてきたのは同じ部活動に入っている湊ちゃん。
あたしの手をブンブン振ってくる。

「ホントだ!やったね!」

親友とも言える湊ちゃんとまた同じクラスになれるなんて

こんなに嬉しいことが新学期早々あっていいものなのだろうか。

今日はここ、夢が丘中学校の入学式。
私も今年から2年生になる。

夢が丘中は全校生徒400名というちょっとしたマンモス校。各学年4クラスずつあって仲がいい子とはほとんど離れてしまう。さすがにあたしも湊ちゃんとはないだろうと諦めていたのだが、どうやら神様はあたしの味方をしてくれたみたい。

が、そう思ったのもつかの間...

「げ、でも翔流いんじゃん。やなんだよねーうち。うるさいし、また一緒とか」

湊ちゃんはそう言ってウーっと口を尖らせた。

翔流は1年生の時も同じクラスで常に騒いでいる男子のひとりだった。よく先生に怒られているのを見た事がある。

湊ちゃんは小学校から一緒らしくてちょっと苦手意識を持っているらしい。

でもそんな彼も何気モテる。

1年生の間で3人くらいの女子と付き合っていて、先輩から告白もされていた。

顔も悪くないし、どちらかと言うと黙っていればかっこいいと言われてもおかしくない。「黙っていれば」の話だけど、

何度か話したことはあるけどよく知らない。むしろいつもうるさくて苦手意識が高い方だった。

私はしばらくクラス替え表を眺めたあと隣で口を尖らせた湊ちゃんに声を掛けて教室に戻った。

教室に入るともうほとんどの生徒が入っていた。

席は指定してあってその席に着く。

あたしも自分の席についてカバンを下ろしていると

「おい、日野山」

前の方から声をかけられた。

翔流だった。

「また同じクラスだな。1年間よろしくな。」

そう言って笑ってみせる翔流。

1年生の頃そんなに話したこともないがこんなふうに面と向かって挨拶してくれると正直悪い気はしない。むしろ嬉しかった。

「うん、よろしくね」

あたしも軽く笑ってみせて準備に取り掛かった。