目の前に、悪夢のアレが蘇る…
そう、目の前にあの幽霊の彼が姿を表したのだ。
すると…
『うわっ!?ゆ!?幽霊!?』
と、言う告白してきた彼の顔が青ざめていく…
そして、ついには、教室から、逃げ出してしまった…
『…はぁ…たす…かった…』
と、彼が居なくなった途端に、身体中の力が抜けてしまう。
すると…
色々とパニックに成って、きちんと回っていなかった思考が動き出す…
『あれ?今…私…誰に助けられたの?…』
気付くと、身体中が怯えを感じ始めた…
(でも…助けてくれた…のかな?…
分からない…けど…もし…助けてくれたのなら…)
『あ、あの…幽霊…さん…』
私は、震えつつも、幽霊さんときちんと目を合わせて、話しかける。
いつの間にか、先程の怒った表情から、心配そうな顔をしていた幽霊さんは、
『な…なんですか?…』
と、きちんと反応してくれる。
(大丈夫。害有る事は言わない。
幽霊さんをさっきみたいに怒らせるような事は言わない。)
心の中で深呼吸してから、私はなんとか怯えを噛み殺して、言葉を紡ぐ。
『あの…幽霊さん…貴方は…私を助けてくれたんですか?…
だとしたら…ありがとうございました…
私…幽霊さんが居なかったら…
本当に…どうなっていたか分かりません…
ありがとうございました…』
すると…
『い、いえ!!そ、そんな大それた事は…
俺、取り敢えず悪い事しようとしてると思っただけで…』
と、急に幽霊さんはあわてふためき、照れ始めた。
幽霊さん、案外可愛い?…
『あ、後!その…俺、幽霊なのに…怖くないの?…
さっきの人とか皆みたいに…
逃げ出したりしないの?…』
と、寂しそうな顔で質問してくる。
(もしかして…幽霊さんは…
いつもこうやって逃げられて、傷付いていたの?…
本当は人とも仲良くしたいのに…
寂しい思いをずっとしていたの…?)
急に、酷い事をしてしまった罪悪感と、それでも、私が忘れた懐中電灯を持ってきてくれたり、こうやって助けてくれたりしてくれる幽霊さんは、本当に純粋に良い(幽霊)だと思う気持ちが芽生える。
『もう…に…逃げません…
逃げてごめんなさい…
幽霊さんはなにもしていないのに…
むしろ、優しくしてくれていたのに…私…』
悔しさと幽霊さんの今日までの日々を想像した悲しさで、泣きそうになるのを必死で堪える。
(此処で泣きたいのも、泣くのも、私じゃない。
本当に泣きたいのは…幽霊さんの方だ…)
必死で堪えながら、返事を待つ…
すると…
『そ、そんな事…
お、俺だって…人間が怖くて…
君から最初は逃げた…
だから…我が儘だとは…自分勝手だとは思うけど…
罪滅ぼしがしたくて…それで…
出来る限りの優しい行動を取ろうとしただけで…
結局、さっきの人を怖がらせた…』
本当に幽霊さんが健気で優し過ぎて泣けてくる…
それでも、堪えながらも私は…
『幽霊さんは…何も…悪くありません…
むしろ、良い人だと思います…
私は、幽霊さんみたいに、透けていないし…生身の人間です…
だから…分かる事なんて…少ないです…でも…
ずっと逃げられて…でも…本当は仲良くしたかったんですよね?…
でも…勝手な偏見や噂で怖がられて…
私だったら…
もしかしたら…人を嫌いに成って…
悪い事をしているかもしれません…
でも…幽霊さんは…そんな事してない…だから…
幽霊さんは…幽霊さん自身にも…
優しく…してあげて下さい…』
何とか心の内を精一杯伝えようとする。
『…俺は…そんなに…綺麗じゃないよ…
酷い事を…昔はしたよ…
でも…何故か…君には…
悪い事をしようとは…思えなかった…
何でだろうね…?…
それは…自分でも分からない…でも…
ありがとうって…思ってるのは…嘘じゃない…
本心だよ?…
こんなに優しくされたのは久しぶりだし…
こんな俺に優しくして…何がしたいのか分からない…
でも…優しくしてくれるのは…
その…凄い…嬉しい…』
と、幽霊さんも応えてくれる
『幽霊さん…私だって…綺麗じゃないです…
人間は…多分幽霊も含めて…
完璧なんてあり得ません…
人間以外だってそうです…
だから…もう少し…幽霊さんも…
悪い所ばかりじゃなくて…
幽霊さん自身の良い所も…
見てあげて…下さい…
て…こんなの…少ししか生きてない上に…
幽霊でもない人に言われたくないですよね…』
と、自分で言って、後悔してしまう…
すると…
『そんな事無い…今…凄い元気づけられた…
ありがとう…』
と、幽霊さんは、笑顔に成る。
初めての幽霊さんの笑顔…
それは…

とても綺麗で美しい物だった…