隣の席の彼に会いに、怖かったけれど、私は教室へと向かった。
約束を破るのは良くないと思ったからだ。
『ガラガラガラ…』
私は恐る恐る、教室のドアを開いた。
すると…
『お、来たか』
暗がりの中にうっすらと月明かりと校庭の光等が射し込む窓。
予想通りの相手がそこには居た。
窓を一つだけ開けて、彼は窓の縁に腰かけたまま、私に向かって話を続ける。
『話…は…その、あれだ』
そう言う彼の髪は、窓から光と共に入ってくる風に揺れていた。
多分、世に言うイケメンであろう彼のこんな姿は、大抵の人が見とれるのだろう。
だけど、私だけは違った。
男性恐怖症の私にとっては恐怖の元凶に違いもなにも無かったのだ。
『な、ナンデスカ?』
私はまだ震える。
耐えられない程の恐怖の中、私は何とか立ち続ける。
『その…あの…』
だんだん彼の頬が赤くなる。
熱でも出したのかとは思いもしないが、私に向かって、恥ずかしがるような何か後ろめたい事が有るわけもない。
『その…お前の事が…す、好きだ!』
『え…えぇー!?』
はっきりと彼が言い切った言葉に私は驚いた。
物凄く驚いた。
『その…まぁ、分からないだろうし、信じられないだろうから…あれだ…。
説明、する』
彼はそう言って更に照れながら考え込み、こう、言い出した。
『その…他の女みたいに俺の事を…その…
特別視しなかったり…あの…あれだ…
他の奴と同じ扱いをされたのが初めてだったんだ。
その…それで…好きに成っちまった』
人生で初めての告白され、はっきり言って、最初は信じられなかった。

彼の視線を見て、本気だと私は理解した。『その…俺と付き合ってくれるか?』
たしかに、彼の目は本気だった。
しかし…
私は、恋をした事が1度も無かった。
だから…
『すみません…好きな人が他に居るわけじゃないんですけど…
その…恋をした事が1度も無かったんです…
でも…貴方を悪い人とは思ってません…
でも…こんな…中途半端な気持ちで付き合えません…
ごめんなさい…』
私は、初めてされた告白に、必死で相手を傷付けないような言葉で付き合えない気持ちを伝える。