「次は南米。五年ほど経ったらどこか分からないけど、また別の国。アフリカかどこかかな?」

僕は何も口に出さず、話している彼女の口元だけを見つめる。

瞳を見つめないのは、きっと彼女は今見られたくないと思っているから。

「・・・日本には、もう・・・戻ってくるつもりはないかな」

窓の外に向けた視線がどこか寂しそうだった。

「七年前の返事、してなかったよね」

沈黙が続きそうだったので、自ら口を開く。

彼女はこちらを向き、恐らくもう分かっているだろう答えを待つ。

「君にその夢を追いかけていてほしいし、僕は僕の夢を追う。お互いがお互いの夢の足枷にはなりたくないんだ」

彼女は小さく溜め息をつき瞳を閉じた。

少し瞼が震えたようにも見えたがすぐに開いて、またこちらに視線を向けた。

「あなたで良かった」

その瞳は少しだけ潤んでいるようにも見えた。

「七年間も私のわがままに付き合ってくれて、本当にありがとう」

彼女はゆっくりと立ち上がり、僕の横をすり抜けていった。

七年間

僕はこの答えを伝えるためだけに、彼女を待ち続けた。

けど、これからもお互いに同じ空を見続ける。

きっと、離れていても。