「美味しい。上手くなったな」

悠斗に褒められ、頬が火照った。

「おにぎりの塩加減も丁度いい」

「悠斗に教えてもらった味だよ」

あたしは照れ隠しに言ってみる。

「一緒に食べないか」

久しぶりに見る悠斗の無防備な表情にホッする。

「うん」

あたしは短く答えて、おにぎりを手にとった。

「悠斗。今度、漬物の作り方を教えてよ」

「ああ、店が一段落ついたらな」

悠斗は残念そうに、声を落とした。

「お店、どうなの?」

「まだ刑事が張りついている。今月末くらいには片づくはずだ」

「悠斗、ちゃんと休めてる?」

「俺は大丈夫。俺より総長が細かい所で奔走なさっている。睡眠もまともにできておられない」

悠斗は箸を置いて、小声で話す。

「組の人間が侵したことの後始末、組は潔白でも警察は何か出ないかと目を光らせているし、総長は抗争を心配して、楔を打っていらっしゃるんだ」