蜷川常務は聞いていないとは言ったが、おそらく何か知っていると感じた。

総長も沖永理事も仕込み杖の大岡顧問も、背中に麒麟の刺青入れた者を知らないと言っていたが、知らないはずがないと思えてならなかった。

わざわざブラックライトの灯りでしか見えない刺青を俺の背中に入れた……。

よほど変わり者か理由がない限り、そんな手の込んだことはしない筈だ。

俺の記憶の中にある麒麟の刺青と、刺青を切られた男は、俺の背中の刺青と無関係とは思えない。

まるで隠すように入れられた刺青と、誰に聞いても知らないという麒麟の刺青を入れたヤクザと、俺自身の正体。

俺はそれを突き止めたくて、凛子の婿にとの話と組に入ってくれとの総長からの申し出に同意した。

もちろん、幼なじみのように育った凛子への想いもあってのことだ。