部活ではなく習い事として道場に通ったのは、先輩とか後輩とか面倒な関係が煩わしかったから。

先輩だから挨拶を強要されたり、雑用を押しつけられたりする、実力とはなんの関係もないことで目をつけられるのはクダラナイと思ったから。

それにもし俺がカッとなって誰かに手をあげた時、自分のせいで試合出場停止になったと言われたくなかった。

何より、住職と総長には問題など何も起こしていない優等生だと思っていてほしかった。

優等生ーーで居さえすれば実際がどうであれ、先ず問われることはなかった。

俺は高校卒業まで真面目な学生のふりをしていたし、表向きは真面目な僧侶のふりをして隠れて煙草も吸っている。

寝つけない夜には酒を１杯、なんてこともする。

歌舞伎町での仕事では客から酒を勧められれば飲んだふりもするし、酔ったふりもする。