俺に両親の記憶はない。

物心ついた時には光泉寺にいた。

神社の住職が事あるごと俺に、神社の檀家で信心深い我孫子会連合の総長が俺の学費を出してくれていると言っていた。

自分が本当は何処の誰なのか、知りたいと何度も思う。

こっそり調べたこともある。

だが何度調べても、めぼしい情報は得られなかった。

俺の記憶にある「麒麟の刺青のあるヤグザ」を知らないかと、総長にも沖永理事にも訊ねたがいづれも答えはNOだった。

自分が何者なのかわからない苛立ちで、心の中は荒んでいた。

剣道と空手を習わせてもらったのは、気を紛らわすにはうってつけだったからだ。

ルールはあるが、大手を振って暴れることができる、その爽快感にのめりこんでいった。

竹刀が面や籠手を鳴らす乾いた破裂音が小気味良かった。

空手の型が決まった時は、自分が全てを掴めたような達成感があった。