1人取り残されている感覚に、体が震える。

結局、涙が止まるまで1時間ほどかかった。

「総長。ありがとうございました」

総長は事務所のソファーにどっしりと座っていた。

「落ち着いたか」

「はい」

「おそらく(いれずみ)はお前の中にある記憶だ。体が熱くなったんじゃねえのかい?」

熱くなったのは身体ではなく、胸の奥だ。

口に出そうとして、言葉を呑み込んで「はい」と短く答えた。

総長が立ち上がり俺の頭にポンと、手を乗せた。

「その記憶、大事にしろよ」

総長は言いながら、俺の頭を撫でた。

大きな手で撫でられ、髪がくしゃくしゃになる。

なのに、総長の手が心地よかった。

俺はされるがままに、身を(ゆだ)ねた。

止めたはずの涙が再び、こみ上げてきそうになる。

俺は口元にサッと、手をあてた。