刺青を彫るのは、相当な痛みを伴うと言う。

表皮の下の真皮に針でインクを入れこんでいく。

1度彫ったら生涯、消えることのない代物だ。

謂わば烙印とも言うべきか。

そんなものをわざわざ痛い思いをして、体に刻み一生背負っていく。

暴力団とは何という覚悟の世界かと、俺は思う。

盃を請けた日。

総長から訊ねられた幾つかの質問の中に「刺青をどう思うか」というのがあった。

俺は「綺麗だと思います」と答えた。

「ほお『綺麗』か」

「彫ってみたいと思うか」

「わかりません」

総長は静かに、笑みを浮かべたまま、しばらく俺を見ていた。

「悠斗。(いれずみ)はむやみに彫るもんじゃねえ。ましてや、墨は自慢するものでもねぇ。わかるな」

「はい」

俺の目に焼きついて忘れられない光景がある。