数時間後。

バーーーーン!!

奥の間から、重々しい音が屋敷中に響き渡った。

防音効果のある厚い襖が開いた音だ。

廊下を歩く数人の足音と、カツカツと床を鳴らす杖の音がゆっくりと近づいてきた。

親父と大岡顧問、芹沢副総長と蜷川常務、矢内、剣先、梁瀬、が厳つい顔を並べて、現れた。

親父の横には、涼しい顔をした悠斗が立っていた。

「皆に伝える。昨日の、松尾組襲撃の功を汲み悠斗に若頭を任ずることとする」

事務所内が騒然とした。

親父が悠斗を前に押し出す。

「至らない点も多々あると承知致しておりますが、精進してまいりますので宜しくお願いします」

一礼して、顔を上げた悠斗が穏やかな笑みを浮かべる。

その顔には、数時間前に感じた不気味さは全く感じられなかった。

拍手と歓声の中で、悠斗だけが平然と表情を変えず微笑んでいた。