悠斗はそう言って、あたしの頭を涼やかな表情で撫でた。

「いいのか? いや、解っているのか? 盃を請けたら……」

「解っているーー俺は総長にも住職にも恩がある。御二方が居なかったら、どうなっていたか」

「でも……」

「僧侶もホストも基本、今まで通り続けていいとのことだ。まあ、今より少し忙しくはなるがな。早く席に戻れ」

悠斗はあたしが慌てて席に戻ったのを確認すると、フッと笑った。

式が中断したことを申し訳なさそうに、深く礼をして、来賓席に着く。

式はその後、滞りなく進んだ。

あたしは悠斗が見守る中、卒業証書を拝した。

式終了直後、あたしは友人に取り囲まれ質問攻めになった。

「悠斗は幼なじみで家庭教師だった」

あたしはそれだけしか話さなかった。