悠斗がひと声発したかと思うと、悠斗の自然で気品と張りのある声に、ざわついていた場内は瞬時に鎮まり返った。

「本日は『徳』について話させていただきます……」

合掌し、一礼して話し始めた悠斗の顔を見つめながら、あたしは体中がカーッと急速に、火照っていくのを感じた。

話の内容は全く頭に入って来なかったし、体が火照っているうちに時間が過ぎた。

「皆さまの門出を心から祝福し、御仏のご加護あらんことを切に祈り、皆さまへのお祝いのご挨拶とさせていただきます」

悠斗が合掌し、ゆっくりと舞台を降りていく。

その姿にカーッと頭に血が登り、あたしは思わず立ち上がり舞台に向かって走り、悠斗をギュッと抱きしめた。

悠斗だけしか、見えなかった。

悠斗の落ち着き払った囁き声が、あたしの耳元に届いた。

「凛子。この後、総長の盃をお請けする」