少女の回答が花丸かは分からないが、気を落ち着かせられるまでには合っていたらしい。
母の顔が無表情になる。

目線を下に向けて少しだけ目を開く。
驚いた表情をしているつもりだろうが白々しい。

「あら、床が汚れてしまったわ」
分かりきっている事を、独り言にしては大きな声量で言う。

誰のせいだと言うのだろう。

「早くしなければもう2人が来てしまうわ。」

あら、いい所に掃除用具があるじゃない

黒髪の少女を捉えたその瞳が大きく弧を描く。

「あなた、舐めて掃除しなさいよ」

──────────息を呑む。
ここに来て初めての動揺を見せた彼女に満足したのか、打って変わった優しい口調で急かす。
「ほら、早く」

今までこんなに醜い仕打ちはされたことが無い。

こんなの、人間の扱いじゃない
どうすることも出来ず突っ立っていると、後頭部を捕えられ床に叩きつけられる
こんな華奢な腕に、こんな力がどこにあったのだろうか。
ガンッ 大きな音がなった後、少女の唸り声が続く。
「……うぅっ」
額を思い切りぶつけてしまった。
「ほら、舐めなさい」
冷たい声が頭上から降る。