私は醜いアヒルの子

頭の上に両手が縫われる。
相手は片手だけしか使っていない。

…私は非力だ。どうしよう…

逃げようにも後ろはドアで動けない。

はぁー、はぁー
私の荒い息の音だけが、車に響く。

相手からは私の目は見えないだろうが、睨みつけながら言葉をぶつける。
「後日お礼の品でもお金でも、お送り致します。お願いします、ここで降ろしください。」

何となくだが、この人は只者では無いような気がする。
今は自分の身が最優先だ。

「断る」
即答された。
この返しは予想出来ていなかった。
「…っそんな……何が…目的ですか?」
「…」
やはり無言。

…お金が目的じゃないの?

大きな財閥のご子息達が通う、私たちの学園、こと、葉龍学園は有名で時々お金目当てで生徒を狙う輩がいる。

そうじゃないってことは、…私が目的?
こんな私を狙うって事は体目的でも無いだろう。
殴って楽しむとか?

どんどん不安が広がる