私は醜いアヒルの子

はぁっ、はぁっ、はぁっ

身体が焼けたように熱い。

喉から血の味がする。

チカチカする目で辺りを見回す。

ここは、どこだろう。
全く人気のない道に迷い込んでしまった。

スマホを見れば1発で現在地が分かり、帰り道も分かる。
もし何かあっても生徒手帳に付いているGPSで誰か見つけてくれる。

それでも、私はあの家に帰る気にならなかった。
と言うよりも、帰りたくなかった。
今日、ほんの少しでもあの黒い人達から解放されたかった。

まだ荒い息を静める為にその場にしゃがみ込む。
足元の水溜まりに自身の姿が映る。

ボサボサの髪にいつの間にか切れていた唇。薄汚れた制服。


ふっ、笑いが込み上げる。
「ふふふ、ふふっ、あははは、あはははっ」
なぜ私は、私が醜いアヒルの子だということを忘れていたのか。
馬鹿な自分が惨めだ。
「…ふっ、ふぅぅ」
泣くな、泣くな、頑張れ、私
下唇を思いっきり噛む。
ジワリ、血が滲んでいく
それでも、噛む力を弱めない

ジワリ、ジワリ

この空気に溶けて、消えたいなあ。