無感情で何も考えず、ただ舌を動かす。
ピチャピチャ、と耳を塞ぎたくなるような汚らわしい音。

私は今、人間の底辺だろうなあ
自分で自分を嘲笑する。

こんな時は頭の中で想像するのだ。


ほら、私は2人の傍に立っていてる傍観者だ。床を舐めている醜い人は私じゃない。
ああ、酷く醜い。私はあんなのじゃない。


クスクスクス
面白いのか嬉しいのか分からないが、床を舐め続ける娘に上ずった声を向ける。

「いい眺めよ。あなたに相応しい姿じゃない。」

でも、と言葉を続ける。

「両手も使って這いつくばりなさいよ。その姿勢じゃあフラフラするでしょう?」

確かに和服の袖を汚さないよう両手で抑えているため、不安定だった。
少女は何も考えず言われた通りにする。


その時少女の体の奥で確かに響いた心の声


ああ、酷く醜い。
だけれど、あれは私じゃない。──────────