青いチェリーは熟れることを知らない①

 音を立てて閉じた扉を見つめていたちえりは、瞼の裏に焼き付いた鳥居隼人の残像に戸惑いながらも――

「元気づけてくれた……んだよね?」

 このまま扉が開いていても、咄嗟になんと言葉を返したらよいかわからなかったが、ちえりはわかっている。

(瑞貴センパイの大切なひとたちだから……だから私も大切にしたいだけ。でも鳥頭の言葉も有難く受け取っておこう)

 一枚の扉越しに互いに向かい合っているふたりの心は確実に近づいていた――。