きみの知らないラブソング

時計は十時を回っている。

少し、ゆっくりし過ぎたかもしれない。
母親に急かされた茉衣は夕食のあと仕方なくお風呂に入った。そして、まだ紅潮した頬のまま部屋に戻る。ベッドに座り込んだ。ここが茉衣の定位置だ。ふう、と小さく息を吐いて呼吸を整える。
片手にタオルを持ち、濡れた髪を軽く拭きながら茉衣はスマートフォンを手にした。


あれ・・・?

新しく通知が来ている。心拍数が上がった。
お風呂上がりだからではない。



送り主が・・・優太だったから。

さっき開いた優太からのLINEには既読を付けたまま、まだ返信していなかった。それなのに新しく送られてきたもう一件のメッセージ。
きっと、意味なんてない。優太の気まぐれだ。

そう思いながら茉衣の動きは止まっていた。
意味のないはずの一言に心が捕まっている。


まだよく分からない相手だから。
だからこそ、こんなメッセージ一つで気になって。柄にもなく期待して、ドキドキする。

ただそれだけだ。深い意味はきっと、ない。





《茉衣、おやすみ。また明日》







頬の高潮が、なかなか治まらなかった。