きみの知らないラブソング





「ただいま〜」



あっという間に高校生活二日目が終わった。
家に帰るや否や、茉衣はベッドにダイブする。

「あ〜疲れた!」

一つ、深呼吸をした。
嗅ぎ慣れたベッドの匂いは安心する。
枕元に座るうさぎのぬいぐるみが茉衣を見て微笑んでいる。おかえり、と言っているようだ。

真新しい制服はまだ着心地が悪く、動きにくい。それだけでなく疲れるのだ。
茉衣は寝転んだまま部屋着に着替えた。

制服が床に散乱している。



散らかった制服の存在も忘れ、茉衣は今日一日を思い出していた。思わず頬も緩む。
入学早々友達がたくさんできた。人見知りの茉衣にとって、それは大袈裟ではなく感動的な出来事だ。まさか今日があんなに楽しい一日になるなんて思ってもみなかったのだ。

茉衣はふと、思いついた。



優太にLINEしてみよう。

他にも昼休みにLINEを交換した友達はいた。
茉衣は思った。
それなのにどうして。

優太なんだろう。


本当の理由は茉衣にも分からない。だが、せっかく私が声をかけた人だから。そんな誰も興味のないような言い訳を思いついた。茉衣自身も気付かないうちに、優太のことが気になって仕方なかったのかもしれない。
話すきっかけになればいい。仲良くなりたいから。


《LINE追加しました。よろしくね》

送信ボタンを押した。
かれこれ数十分悩んだ結果だった。



たった一言送るだけでこんなに悩むなんて。