きみの知らないラブソング



あれからというもの準備は着々と進んだ。

人が溢れる教室は夕方になっても暑さが残るようになってきていた。夏の訪れを感じる。


そして、文化祭前日。

綺麗にクロスの張られた机。水色の布で覆われた壁一面にはカラフルな風船。黒板には美術部の手によっておとぎ話のような世界観が描かれている。そして、扉にはレースをあしらった。

これほどまで可愛らしく装飾された教室はいつも使っている場所だとは到底思えない。

かなり上出来だった。

さらに、明日になれば入り口のスピーカーからは流行りの音楽が流れ出す予定だ。
訪れる人はみんなわくわくすること間違いなし。



「よし、完成!みんなお疲れさま!」

底抜けに明るい声が飛び込んできた。
文化祭のクラス実行委員を務めている山本陽加(ヤマモトハルカ)だ。
今回の文化祭では率先して仕事をおこないながらも、上手くクラスメイトの協力を仰いで指揮を取っていた。教室内を駆け回る度に高い位置でポニーテールが揺れていた姿が印象的だ。

一組の装飾は、陽加のリーダーシップがあってこその完成度だと言っても過言ではないだろう。



無論、人見知りの茉衣はあまり関わったことがないのだが。