中学三年、夏真っ盛り。
引退間近だ。気が焦っていたのかもしれない。
人一倍練習熱心で毎日練習を欠かさなかった。
全員で最高の音楽を奏でる。
誰よりも良い音を。誰よりも良いハーモニーを。
茉衣はその一心で歌に身を捧げていた。
_____うちらは仲良くやりたいだけなのに
あの日の仲間の言葉が頭に響く。
今、考えれば仲間とすら呼べない関係だが。
本気だったのは茉衣だけだった。
_____茉衣は真面目すぎて疲れる
_____一緒に歌っても、誰も楽しくないから
_____ウザいからやめてよ
茉衣は他の部員から追われるようにして、大好きな部活を辞めた。そうせざるを得なかった。
最後のコンクールまで一ヶ月を切った頃だった。
本気になったのが間違いだった。
一人で熱心になって。馬鹿みたいに練習して。
それがみんなには迷惑だった。
ただ、それだけ。
それだけ。なのに。今でも胸が痛くなる。
「・・・怖いの、歌うのが」
呼吸を整える。初めて本音を告げた。
優太は黙って茉衣の話を聞いている。
