「茉衣、お待たせ」
優太が戻ってきた。
たくさんのペンキや小道具が入った袋を手に提げている。これだけあればしばらく文化祭の準備には困らなそうだ。
「わっ何?!」
頬に冷たさを感じた。反射的に声が漏れる。
「買ってきちゃった、これ」
優太は悪さをした子どものような悪戯な顔で笑い、茉衣に缶ジュースを手渡す。
茉衣の大好きなりんごジュースだった。
「あっ、ありがとう」
「ちゃんと水分摂らないとね」
そう言って今度は優しく微笑んだ。
優太はころころと表情を変える。
その一つ一つがすべて美しい。
優太は茉衣の隣に腰をかけ、買ったばかりのりんごジュースに口を付けた。
それを見て茉衣も同じように飲み始める。
まろやかな口当たりだった。
甘味の中に適度な酸味が混じって、スッキリとした味わいに仕上がっている。
何とも言えない甘酸っぱさに胸がきゅんとなる。
