きみの知らないラブソング


ホームセンターに着いた。

入り口で足を止めると、まだ六月だというのに変な蒸し暑さに頭がくらくらする。
しかし、中に入ってみるとそこは外とは対照的に涼しい。その温度差が少し居心地悪かった。

茉衣は入口に設置されたベンチに腰をかける。



「茉衣、休んでなよ。俺見てくるから」

「え?」


声のほうに目を向ける。優太はタオルで汗を拭っていた。その姿が変に男らしくて不覚にも茉衣は胸を鳴らした。


「暑いし、ここまで歩いて疲れたっしょ」


ドクンと脈を打った。気付かれている。
びっくりして言葉が出なかった。
優太はたまにこうやってさりげない優しさを見せる。些細なことにもすぐに気が付くのだ。

しかもきっと、無意識に。



じゃ、なんて言って大きな左手を軽く挙げて照れくさそうに笑っている。
少し遠くからでも分かる。綺麗な人だ。

優太は背を向けて歩き出していた。




茉衣はしばらく優太の後ろ姿に見惚れていた。