ふうこさんと見えない夏目くん

しばらくして佐々木くんは息を切らして戻ってきた。
手にはビニール袋、暑くなったのか髪の毛をかきあげ、腕まくりをしている。

……ちょっとかっこいいなと思った。ちょっとね、ちょっと。


「お待たせ、これ」


肩で息をする佐々木くんに手渡されたビニール袋の中身はたくさんの花火。
お店で売られている花火の、中身だけを集めたよーなやつ。


「花火?」


まさかの花火の登場で、びっくりしてしまう。
そんな私を他所に、どうやら佐々木くんと夏目くんが話し始めた。


「はぁ?ちょっと待てって、いいとこ取りかよ」


眉間にシワがよっていて、顔だけ見ると不機嫌そう。
でも、声色は優しい。


「わーかったよ、とりあえず5分だけな」


あ、夏目くんが出てくるのか。
私も少し、こういう状況に慣れてきた。