人魚姫の涙

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「成也、コレ返すね。預かってたモノだから」


ひとしきり俺に抱き着いた後、紗羅は徐に首にかかっていた夜光貝のネックレスを外した。

月明かりに照らされて、虹色に光る貝。


「いいよ。紗羅にあげる」

「え!? でも、成也、これ宝物って」

「今は紗羅の宝物だろ」

「――うん!! 成也ありがとう!!」


無邪気に笑う紗羅が愛しくて、思わず頬が緩む。

じっと紗羅を見つめると、紗羅も俺を見つめかえしてくる。


何度も何度も、紗羅はあの後、俺に好きだと囁いた。

その度に、恥ずかしさと嬉しさが込み上げて幸せの中に埋もれる。


自分の中にこんな感情があった事に驚いた。

こんなにも誰かを愛おしいと思えたのかと思って。

だけど、誰かを愛せる自分がいて良かったと思う。

それまでは、こんな感情、誰にも芽生えた事なんて無かったから。