人魚姫の涙

「ほ……んとう?」


突然の告白に、紗羅は驚いたように目を見開いた。

真っ青な瞳が面白いくらい揺れている。


「待たせてゴメン」

「ほんとう?」

「本当」


何度もそう確認して、首を傾げる紗羅。

だけど、ようやく俺の言葉が本気だと分かったのか、突然泣き顔になったかと思ったら、勢いよく顔を伏せてしまった。


「紗羅?」

「――見ちゃダメ」

「え?」

「見ないで!」


微かに震える紗羅の声が可愛くて、思わず紗羅の髪を撫でた。

すると、今度は弾かれたように顔を上げた紗羅。

そして、瞳に涙を浮かべたまま、ニッコリと笑った。


「本当ね!!」


そう言って、体当たりするみたいに俺に抱きついた。

勢いあまって俺の体が後ろに倒れ込む。

しかし、そんな事お構いなしに、紗羅は俺の上に乗ったまま抱き着いて離さなかった。


「痛って~!」

「成也大好き!」




この日。

俺と紗羅の『長いお別れ』が終わった。