人魚姫の涙

それを見つめて、じっと考え込む。

ずっと、どこかで見た事あると思ってた。

ずっと、胸のどこかでつっかえていた。


出てきそうで出てこない答えがもどかしい。

脳みそをフル回転させて、じっと紗羅の手の中で光るソレを見つめる。

真っ白な手の中で虹色に光る貝。

あれは、きっと夜光貝のかけらだ。


だけど、その瞬間、ビリビリと電気のようなものが体に走った。

紗羅と別れたあの日、交わした約束を思い出す。

離れたくなくて、忘れられたくなくて、幼いながらに必死に交わした約束――。


「――もしかして……俺の?」


半信半疑のまま、そう言う。

だって、18年前のそんなものが残っているなんて信じられなかった。

それも、今でも宝物の様に肌身離さず。


驚いて瞳を揺らす俺に、紗羅はニッコリと笑った。


「そう。これは成也の宝物だよ。あの日私に預けてくれた」


紗羅の手の中で光るそれは、俺が紗羅に最後に渡したモノだった。