人魚姫の涙

花火に火を点けようとする俺の服をつまんで、目を輝かせている紗羅。

暗闇の中に生まれた宝石のような明かりに、歓喜の声を浮かべた。






「綺麗だね～」

「やっぱり締めは線香花火だろ」


それから、しっかり花火を楽しんだ俺達は、定番の線香花火で締めを括っていた。

２人で堤防に座って花火を見つめる。

パチパチと小さな音を立てて揺れる線香花火を紗羅は嬉しそうに微笑んで眺めていた。


「なぁ、紗羅」


波の音が聞こえる中、ゆっくりと問いかける。

反応するように紗羅がこっちを向いて首を傾げた。


「なあに？」

「どうして、急に日本に帰って来たんだ？」


この雰囲気に便乗して、今まで聞けなかった事を聞く。

ずっと不思議に思っていたんだ。

１８年も帰ってこなかった紗羅が突然帰国したのには何か訳があるんだろうか。