人魚姫の涙


「紗羅~行くぞ~」

「待って待って!!」


ドタバタと階段を降りてくる紗羅を玄関先で見上げる。

真っ白のワンピースを床に引きずりながら走ってくる姿を見て、転ばないかヒヤヒヤした。


「成也、花火持った~?」

「全部持ってるから大丈夫」

「ありがと~!  おばさん行ってくるね」


玄関で見送っている母さんに紗羅がブンブンと元気よく手を振る。

まるで子供みたいな姿に笑みが零れた。


「は~い、いってらっしゃい。成也、紗羅ちゃんの事頼んだわよ」

「分かってる」

「いってきまぁ~す!」


はしゃいでいる紗羅は、靴を履くや否や俺の腕を取って玄関を飛び出していった。