人魚姫の涙

懐かしい話を持ち掛けた俺に、紗羅は嬉しそうに笑った。


「あの時の成也、スーパーマンみたいだったよ」

「スーパーマン?」

「あの時だけじゃなくって、私にとったら成也はいつもスーパーマンだったんだよ」


ニッコリ笑った紗羅は、猫みたいに俺の腕にすり寄ってきた。

触れ合う肌と肌に、俺の心臓が早鐘を打ち始める。

そんな俺の気も知らずに、紗羅はギュッと俺の手を握った。


「あの時、なかなか泣き止まない私に、成也何て言ったか覚えてる?」

「――あ~、それ以前のインパクトが強すぎて、覚えてないや」

「え~何それ~」

「だって、夜になっても出てこないから、俺がどれだけ焦ったか分かってんの?」

「ふふっ。ごめんってば~」


擦り切れてしまった18年前の記憶。

確かずっと泣いている紗羅を慰めてたのは、微かに覚えてる。

でも、何て言ったかなんて全く覚えていない。


すると、クスっと小さく笑った紗羅。

そして、立ち止まったかと思ったら、背伸びをして俺の耳に顔を近づけた。

何かと思って、俺も腰を僅かに屈めると、紗羅はヒソヒソ話でもするように小さく声を上げた。


〝これから、どこにいても僕が紗羅ちゃんを見つけてあげるよ″


そう囁いて、嬉しそうに笑った。