人魚姫の涙


「成也っ!!」


不意に聞こえた声に反射的に振り返る。

すると、少し離れた所に見覚えのある姿を見つけた。

その姿を見て、自分の頬が緩むのが分かった。


真っ赤な傘をさして、微笑む彼女。

俺の姿を見つけて、パタパタと今にも転びそうな走り方で近寄ってきた。


いつから待っていたのか、髪が濡れている。

それでも、全くそんな事を気にしていないのか、満面の笑みで俺に傘を差し掛けた。


「おかえりなさい」


ふんわりと雨の匂いに混ざって香る、甘い香り。

ふわふわの栗毛。

俺を見つめる、目の覚める様なブルーアイズ。

会いたかった姿が、そこにあった。


「ただいま。紗羅」