人魚姫の涙

「いや。何もないよ」

「――…そっか」


微笑んだ俺の顔を見て、友香はつられる様にして微笑んだ。

納得なんてしてない顔だったけど、何も言わずに視線を前に戻した。


しばらく、互いに何も言わずに駅までの道を歩く。

すると、不意に友香が俺の手を握って足を止めた。


「成也」

「ん?」

「好きだよ」

「どしたんだよ。急に」


いつもは言わないような友香の言葉に、俺も足を止める。

すると、不安気に俺を見つめていた友香だったけど、すぐに空気を変えるようにニッコリと笑った。


「なんでもなーい!!」

「なんだ、それ」

「言いたくなっただけ。あ~恥ずかしい」


無邪気に笑って、俺の手を大きく振った。

昔なら、可愛くて仕方がないと思っていた。

なのに、今は罪悪感で素直に笑えない。


最低だ。

俺。