人魚姫の涙

結局その後、食堂で友香と話したけど、何を話していたかは覚えていない。

サークルに行く時間になって、友香が寂しそうに手を振る姿だけ覚えている。

最低だな、俺――。



◇◇◇



カラカラと自転車を押しながら家へと向かう。

胸の奥がモヤモヤする。

浮かぶのは、紗羅のあの顔。

辛そうに顔を歪めた、あの表情――。


なんだ?

どうして俺、こんなにショック受けてるんだ?

紗羅に友香と一緒にいる所を見られたから?

紗羅が俺に彼女がいたのを知っても、笑顔だったから?


頭の中は紗羅でいっぱいだった。

どうしてなのかは自分でも分からない。



―――早く会いたい。

そう思う俺は、一体。