人魚姫の涙

広い校内を駆け足で進む。

待ってよ~! と後ろから可愛い声で俺を呼ぶ友香を待つ事もなく。

まるで何かに駆り立てられるように、人だかりの方へと向かった。


「ハァ――」


裏門には友香の言っていたとおり、男女入り混じった人だかりができていた。

まるで何かを囲むように、みんな円の真ん中に視線を向けている。


「すいません」


額に汗しながら、人の間を縫ってその中心へと向かう。

すると、人だかりの間に、真っ青なワンピースを着た女性が見えた。

その姿を見て、大きな声をあげる。


「紗羅!」


沢山の人に囲まれて、困った顔をしていた紗羅だったけど、いつの日かと同じように俺の声に反応して、こちらを振り返った。

そして、俺の顔を見た瞬間、ホッとしたように息を吐いた。