人魚姫の涙


案の定、輪の中心にいたのは少し困った顔をしながら微笑む紗羅だった。

それを、取り囲んでいるのは男・男・男。

ハイエナの如く群がる男達に溜息が漏れた。


「紗羅!」


輪の向こうから中心に向かって名前を呼ぶと、紗羅は子犬の様にパッと顔を上げた。

そして、キョロキョロと周りを見渡して、俺の姿を見つけた瞬間、ぱぁっと顔を綻ばせた。


「成也!」


トコトコと人混みを割って、こっちに向かってくる紗羅の姿に少なからず嬉しく思う。

紗羅は嬉しそうに俺の元までやってきて、お疲れ様と言いながらニッコリ笑った。


その瞬間、悪寒にも似たものが背筋を舐める。

ハッと我に返って辺りを見回すと、狂気に似た男どもの視線が俺に向かって注がれていた。


やべぇ。

怖ぇ...…。