人魚姫の涙

――そんな質問攻めの一日を終えて、ようやく最後の講義も終わりに近づいてきた。

待ち合わせの場所を紗羅に連絡しようと思ったが、連絡先を知らない事を思い出して落胆する。

どうしたものかと考えあぐねていると、終わりを告げる教授の声が響いた。


「それでは今日はここまで」


その声を皮切りに、ザワザワと騒がしくなる講義室。

俺も机の上を片付けて席を立った。


「成也、今から紗羅ちゃんと帰んの?」

「お~」

「いいなぁ! 人魚姫っ! 今度一緒に遊びに行こうぜ!」

「お~」


雅樹には適当な返事を寄越し、生徒でごった返す廊下を通り抜け、校門へと向かう。

朝別れた場所か校門の場所にいるだろうと踏んで、まずは校門に向かう事にした。


そんな時、視線の先に人だかりができているのを見つけた。

まるで円を描く様に固まっている生徒に眉間の皺が濃くなる。


――…なんだか嫌な予感がする。


速足でその場所へ向かうと、ザワザワと生徒達の声が大きくなる。

そして嫌な予感を胸に、輪の中心にいるであろう人物に目をやった。

そしてその瞬間、予感は的中する。