人魚姫の涙

「それ...…紗羅ちゃんの?」


まさかの展開に和志が首を傾げる。

その言葉に、紗羅は嬉しそうに頷いた。


「うん。私の宝物」


そう言って、俺の方を向いてニコリと微笑んだ紗羅。

意味深なその視線に首を傾げる。


ん? なんだ?

というか、なんだ? アレ。

宝物っていうほどの何か思い入れがあるのか?


「――あ。授業始まるぞ」


一瞬シンとした空気の中で、和志が時計を見ながら言った。


「あ、やべ。本当だ」


時計を見ると、あと2、3分で授業が始まる時間だった。

だけど、そこで問題が一つ上がる。


紗羅どうすっかな。

さすがに授業まで出る事はできないからなぁ。

そんな事を考えていると。


「成也、授業は何時に終わるの?」

「え? あ~今日は5時ごろかな」

「分かった! じゃぁ終わったら校門の所で待ってる」


俺の心配を他所に、ニッコリと笑ってそう言った紗羅は、俺や和志、雅樹に手を振ってそのまま来た道を走って行った。