人魚姫の涙

俺の擦れる声を聞いて、女性は俯いていた顔を勢いよく上げてこちらを振り返った。

その瞬間俺を捉える、真っ青な瞳。

信じられないと言わんばかりの顔で、目を見開いている。

そして、僅かな沈黙の後、小さな唇が震えながら開いた。


「せい……や?」


その声を聞いた瞬間、俺の世界が崩壊する。

弾かれるように駆けだして、その人を抱きしめた。


まだ現実を受け止め切れていないのか、胸の中にいる紗羅は何も言わない。

だけど、しっかりと俺の背に腕を回した。

その事が嬉しくて、幸せで、堪らない。


今、ここに紗羅がいる。

ずっと探し求めていた人がここにいる。

俺の胸の中にいる。


いろんな感情が爆発して、言葉が出てこない。

ただただ、その人の存在を確かめるように強く抱きしめた。