人魚姫の涙


周りの景色が見えなくなる。

俺の全神経が微かに聞こえる歌声だけに注がれる。


ドクドクと心臓が煩い。

耳の奥がゴウゴウと鳴る。


極限状態にまで研ぎ澄まされた俺の世界は、目の前に現れた一人の女性に注がれた。

堤防に腰かけ、目の前に広がる海を見つめる、その人。

長い栗毛の髪を風になびかせて、真珠の様に白い肌は夕日を取り込んでいる。

真っ白な天使の様なワンピースが波風に揺れる。


俺の世界が動きを止めた。

夕日を見つめる女性を、ただ見つめる。

そして、震える声で呟いた。