人魚姫の涙



「紗羅――っ!!!!!」



いつもと同じ風景。

いつもと同じ朝。

いつもと同じ匂い。

いつもと同じ世界。


それなのに。

紗羅だけが、スッポリとその世界から抜け落ちていた。

太陽を失った世界に光なんてない。


目の前が真っ暗になる。

涙が止めどなく溢れて、息も出来ない。


あぁ。

夢ならどれだけ良かっただろう。

目が覚めたら、全部悪い夢だと――。


「紗羅……」


どれだけ名前を呼んでも、愛おしい人は現れてくれない。

俺の名前を呼んで、笑顔を見せてくれない。