人魚姫の涙

「嘘だろ……」


どこをどれだけ探しても、紗羅の姿は無かった。

キッチンにも、屋根裏部屋にも、一緒に散歩した湖畔の公園にも。

どこにも、その姿は無かった。


だけど、不意に昨日の紗羅の言葉が蘇る。

朦朧とする意識の中で、聞こえた声。


〝目が覚めたら全部元通りだから″

〝私達が出会う前に――"


「嘘だろ……紗羅」


静かなリビングに俺の震える声が響く。

現実を受け止め切れなくて、眩暈がする。


「ずっと一緒にいようって、言ったじゃないか」


泣きたくないのに、涙が溢れる。

これは何の涙だ?

悔しさ?

怒り?

寂しさ?

憤り?


グルグルと嵐の様に乱れる俺の感情が爆発する。

訳の分からない感情に支配されて、頭がおかしくなる。