「泣かないで」


優しく囁かれる言葉。

その瞬間、ぽたっと紗羅の頬に俺の涙が落ちた。

あまりにも優しい言葉に、その声に、押し込めていた想いが溢れる。


2人でいられれば、どこでもいいと思った。

現に、俺も今涙が出るくらい幸せなんだ。

だから、この涙は嬉し涙なんだ。

紗羅と一緒にいられる事の喜びの涙なんだ。


大丈夫。

きっと、俺達は幸せになれる。


「大丈夫よ」


唇を噛み締める俺の頭を、ぎゅっと抱きしめた紗羅。

その優しい熱を感じて、俺も潰れる程紗羅を抱きしめた。


「紗羅」


訳の分からない感情に支配される。

幸せなはずなのに、ふとした瞬間に精神が大きく揺らぐ。


こんなんじゃダメだと分かっている。

紗羅は俺が守ってあげなくちゃ。

自分自身に何度もそう唱えて、俺は紗羅を抱いた。