人魚姫の涙








「これから、どこに行くの?」


それから、手を繋ぎながらあてもなく海岸線を歩いた。

頭の中を整理する時間が欲しかったから。

しばらくは紗羅も何も言わずに俺の隣を歩いていたが、不意に視線を俺に向けてそう尋ねた。


「まずは服を変えないとな」


無理して笑っているようにも見える紗羅を安心させるように、優しく微笑んでそう言う。

紗羅は完璧ルームウエア。

今は夜だからいいけど、朝になればこんな格好で出歩けない。

そう思った俺は、携帯を開いて1人の男に電話した。


『もしもし~』


受話器の向こうから、少し眠そうな声が聞こえる。

時間を見れば12時を過ぎているから、申し訳ない事をしたと内心思う。

だけど、今はそんな事にかまっていられない。


「和志? 悪い。寝てた?」