人魚姫の涙


息をする事も忘れて、おじさんの声に耳を傾ける。

紗羅も同じ様に、大きな瞳を瞬きもせずに開いている。


「2人は――」


ドクドクと心臓が太鼓の様に体を打ちつける。

喉がカラカラだ。


「事故で亡くなったんだ。2人一緒に」

「事...…故?」

「あぁ。重複妊娠の事が分かってから、茜の様子がおかしくてね。大悟ともたまに会っていたようだ」

「――」

「私もその時から仕事が忙しくてね、家を空ける事が多かった――同じ境遇に立たされてしまった大悟と茜。きっとお互い何度も会って、話していたんだろうね」


恐らく、2人で何度も会って今後の事について話しただろう。

だけど、狂ってしまった中で、結論が出たとは思えない。


「ねぇ」


考えを中断して、声を上げる。

一つ、疑問に思った事がある。


「なんだい?」

「おじさんは、茜さんになんて言ったの。母さんのお腹の中に自分の子供がいるって分かった時...…なんて」


おじさんにとっては、愛する人との間に授かった子。

嬉しくないはずがない。

でも、おじさんには茜さんという妻がいる。

例え、仮面の夫婦でも。