人魚姫の涙

ようやく現れた味方に縋る様に、慌てて声を上げる。


「母さん! ちょっと、 何!  誰、この子!」


未だに俺の服を掴んで離さない彼女を指さして、そう言う。

笑っているという事は怪しい人物じゃないのだろうけど、訳が分からなくて声が荒くなる。

そんな俺を見て、母さんはニコニコと嬉しそうに微笑みながら首を傾げた。


「あら覚えてないの?」

「は?」


憶えてるも何も、髪しか見えないし。

訝し気に首を傾げたと同時に、それまで一向に離れなかった彼女の腕の力が弱まる。

ハッとして視線を母親から自分の胸元に下ろした時、目の前に見えた光景に言葉を失った。


「何年ぶりかしらね~、お母さんもビックリしたんだから」


フワフワの栗毛。

陶器の様な真っ白な肌。

そして、目の覚めるような鮮やかなブルーアイズ。




「紗羅ちゃんよ」