人魚姫の涙

真っ直ぐに俺の目を見て話す紗羅。

その顔は見た事もないぐらい真剣で、まるで別人のようだった。


「俺に会いに来た――…」

「――」

「そして……ある事を確かめに来た」


そう。

確かに紗羅はそう言った。


「うん。そう。確かめにきたの」

「何を?」


ドクドクと心臓が早鐘のように鳴り出す。

頭の中で警報がなる。

これ以上、進んではいけないと、警報が――。


ゴクリと息を飲んだ俺に、沙羅は握る手に力を入れた。

そして、意を決したように息を吐いた。


「パパが、1年前に大怪我をしたの」


ゆっくりと、そう話し出した紗羅。

俺は魔法にかかったように、紗羅の声を聞きながら微動だにしなかった。


「自動車にひかれて、意識不明で病院に運ばれたの」

「――」

「私も、その日は学校で授業だったんだけど、呼び出されて急いで病院に向かったの」


そう言う紗羅の言葉は微かに震えていて、当時の紗羅の心が手に取るように分かった。


「着いた途端に輸血が足りないって言われて、私の血を使ってって言ったの」

「――」

「ヨーロッパの人ってね、日本と違って自分の血液型を知らない人がほとんどなの。私もその1人で、自分の血液型もパパの血液型も知らなくて調べてもらったの」

「――」

「調べた結果、パパは0型で、私はB型だった」