人魚姫の涙




リン

リン


風鈴の音が静かな部屋に響く。

風呂から上がって、自室の窓際で湯冷ましをする。

こんな静かな夜なのに、堤防での紗羅の言葉が頭に張り付いて心が落ち着かない。


いつになく真剣だった紗羅の顔。

家に帰ってきてからはいつも通りだったけど、無理をしているようにも見えた。


時計はもう23時を回った。

だけど、紗羅は一向に部屋に来る様子はない。

本当は呼びに行きたいぐらいだったけど、紗羅のあの神妙な顔を思い出して、じっと待った。

きっと、紗羅なりに何か考えがあるんだ。

そう思いながら、微かに聞こえる波の音に耳を澄ました。

すると――。


「成也?」


ドアの向こうから、声がした。