人魚姫の涙


「そっか」

「紗羅は?」

「え?」

「紗羅は運命を信じるのか?」


俺の言葉を聞いて、紗羅は少しだけ目を細めた。

月明かりに照らされた海が瞳に反射して、まるで泣いている様に見える。


「私は、分からない。良い事だけが運命とは限らないし、悪い事も運命で初めから決められているなんて思うと、少し怖い」

「――」

「でも、成也と出会えたのは運命なんだよ」


そう言って、紗羅は俺の目を見てニッコリと笑った。

キラキラと光る瞳が、何故か切なく光を放つ。


「神様が巡りあわせてくれた。私と成也を。それは運命だと思いたい」


そう言った紗羅の瞳は、まるで何かを決心したように強く輝いていた。